「ビルから落ちている間」

 

ある日、僕はビルから落ちていた。

いつからだろうか。
運がなくなったのは。

遠足のときは森で迷ってクマに襲われるし、
落ちている犬のフンは毎日のように踏んでしまう。

かなりの速さだ。
気付くともう17階から4階まで落ちている。

悔しい。。
結婚もしないまま、
このまま死んでいくのか。

サラリーマン三年目にして、
死亡。

すぐにみんなの記憶からもなくなるだろう。
世界で今日、何人の人が死んだのだろうか。
そのうちの一人だ、僕は。

助けはきっと来ない。
地上にこのまま落ちていくのみ。
つまり死ぬ。

手紙でも残しておけばよかった。
父さんともっと分かり合いたかった。
何故、僕が。。

人間はたくさんいるじゃないか。
ヌクヌクと何の目的もないまま生きてるやつがたくさんいるじゃないか。

ねえ、母さん。
喉から手が出るほど命が惜しいよ。
半分もまだ生きてないよ。

ヒーローになりたかったんだ。

普通の人生で終わりたくないよ!

平凡すぎるよ、こんな人生!
本当に!

 

まあ、いいか。

未来なんて、
無に等しかったから。

面倒くさいし。

もう、いいや。

 

やっぱ、嫌だ!!
夢だ!これはきっと夢だ!
よくあるぞ、このパターン!
ラストで絶対目が覚める。

理解できないもんなやっぱ。
ルール無用すぎる。

冷静になれ。

 

ロックミュージックが頭の中で流れるなか、

私は死んだ。

 

ヲタクが僕の死体を見下ろし、こう言った。

 

「んじゃ」

 

 

「小鳥が吐いた」

 

天気がいいので僕は外に出た。
外には何もなかった。

僕は何を期待していたんだろう。
僕は家に戻った。
左手で脳みそをまさぐり、僕は期待を取り出した。
期待はもっと鮮やかな色をしていると思っていたけれど、壁の色をしていた。
僕は、壁に期待を叩きつけた。
こうして僕の体から、期待は一切なくなった。

一方、床に落ちた期待は、ニヤリと笑い窓に向かっていくと、
あっという間に空へと飛び去っていった。

小鳥にぶつかった。

 

小鳥が吐いた。

 

 

「犬が笑った」

 

気付けばもう8月だ。
今日も朝になると僕の目は開き、僕の足の裏は床についた。
鳥たちが僕に話しかけてくる。

「朝だよ!朝だよ!」

脳は分かっている。鳥め。
3分かけ形を成された朝食は、あっという間に闇に葬られた。
僕はげっぷを開いた後、ブラシで歯をささめき、
口の中に水を入れ、掻き乱し全てをさらけ出した。

「ああ、愉快な朝だ。」

僕は轟かせた。
階段を上がりラジカセをこじらせると、
鳥たちは猟師に撃たれ、闇に葬られていた。
僕は闇に飛び込んだ。

「鳥を、朝食を返してくれ!」

その声は3つに割れ、その全てはくそにまみれた。

「ちくしょう。ちくしょう。」

僕は揺れた。
ラジカセを巻き込み、ブラシをちらつかせ、時にかじりついた。
時はブレた。
長針は記憶をなくし、短針は夢を追いかけた。
秒針は木になった。
立派な立派な木になった。

木が僕を見ている。
僕は視線を入れ換え犬を見た。

犬も僕を見た。

 

犬が笑った。

 

 

「ポール・スミス」

 

こんばんは。
ポール・スミスです。

皆さん、今年の夏、いかがお過ごしですか?
暑いですが、体調崩されていませんか?

私は一度、夏風邪をひいてしまったのですが、
今はだいぶ良くなり、充実した日々を過ごしています。

皆さんは、夏を楽しんでいますか?
どこか遠出はなされましたか?

私は、なかなか仕事が忙しく、
あまり遠くへは行けませんでした。

一泊二日で、宇宙には行けたんですがね。

 

冗談ですよ(笑)

 

ポール・スミスでした!

 

 

「普通の部屋」

 

どこだ、ここは。

普通だ。

 

ある程度の広さ、
ある程度の色味、
ある程度の机や椅子や棚、
目が覚めると僕は、そんな普通の部屋にいた。

一体、何故僕が、こんなところにいるのだろう。

それにしても普通だ。
これほど「普通」と思える部屋も、なかなかないだろう。

まあ確かに僕は、成績も運動神経も普通。
全くモテないわけではないが、決してモテるわけでもない。
日々つまらないわけでもないし、ものすごく楽しいわけでもない。
友達もほどほどにいる。
体重も50kgそこそこだし、
身長もクラスでは中くらいで、8mほどしかない。

 

まあ、こんな普通の僕なんだから、
普通の部屋にいてもおかしくないか(笑)

 

 

「広い部屋」

 

どこだ、ここは。

静かだ。

 

目が覚めると私は、広い部屋にいた。
どうやら私は、この部屋に閉じ込められているようだ。
やけに広いな。

それにしても不思議な部屋だ。
半分が暑くて明るく、もう半分が寒くて暗い。
私はその、ちょうど真ん中にいるようだ。
どちらかに行ってみようとしたが、うまく体が動かせない。

私は、杭に縛りつけられていた。

ん…暗い方の奥に誰かいるようだ。
肌が黄色い。黄色人種だろうか。

「おい、そこに誰かいるのか?」

と、呼びかけようとしたが、無理だった。
私は完全に疲れ切っていて、体をジリジリと動かすのがやっとの状態だった。
どうやら向こうも、私と同じ状態のようだ。

しかし一体何故、こんな部屋に連れて来られたのだろうか。
何で私が、こんな目に遭わなければならないのだろうか。
誰が、いつ、何の目的で。

私の過去の記憶は、一切消えてなくなっていた。

私は誰なのか、
年齢はどのくらいなのか、
何のために、誰が、どのタイミングで、私をここに連れて来たのか、
ここは、この広い宇宙のどの辺りなのか、
そして私は、これからどうなるのか…。

 

あ、一つ思い出した。

 

 

ここは宇宙だ。

 

 

「狭い部屋」

 

どこだ、ここは。
苦しい…

目を開けると私は、多くの何かの中にいた。

死体だった。
数えきれないほどの死体と共に、私はこの狭い部屋に閉じ込められていた。
息があるのは、私だけだろうか。
一体、何故…

声を上げようにも、いかんせん苦しすぎて、そして体も弱り切っていたため、
一切声は出せなかった。

私は白人だ。
もともとは黒人であった。
くだらないやつらの仕業で、白人にさせられた。
勝手なやつらだ。

そして私は殺された。
しかし、生き残った。
生き伸びてやる。
何としてでも。
そのために、まずは、この状況をどうにかしなければ。
しかし、どうにも体が動かない。くそ。

…少し部屋が明るくなった。
上の死体たちがどかされているようだ。
再び、闇が訪れた。

半日が過ぎた。
腹が減った。

再び、光が訪れた。
前回よりもさらに明るい。
徐々に徐々に明るくなってくる。

チャンスだ。逃げ出そう。

生きていることを悟られてはいけない。
死体を装って、やつらに動かされたその後がチャンスだ。
タイミングを見誤るな。

きた。

目を閉じろ。

動くな。

 

私は部屋の外に出され、折りたたまれ、

鼻をかまれた。

 

体中、鼻水まみれにされ、
クシャクシャに丸められ、放り投げられた私は、
タイミングを見計らって、
ゴミ箱から脱出した。

 

 

こうして私は生き伸びた。

 

 

 

「伝説の剣」

 

ついに、ついに、私は手にすることができた。

旅に出てから、約5年。
最初は、素手から始まった。
世にも奇妙な、怪物たち。
恐ろしい魔法を使う、魔法使い。
残虐極まりない魂を持った、悪魔一族。

多くの敵と戦っていくうちに、私の武器は、素手から、木の棒になり、
鉄パイプ、小さな剣、斧、鋭い剣、魔法の出る剣、
大きな斧、魔法も出るし鋭い剣、と徐々に徐々に変化していった。

そして、ついに見つけた。

「地獄の山」を登ぼっていき、途中の「迷いの森」を抜け、「亡霊の洞窟」に入っていき、「亡霊の洞窟」の奥に潜む「スリープドラゴン」をどうにか倒し、「スリープドラゴン」が飲み込んでいた「奇跡の宝箱」を取り出し、「奇跡の宝箱」を「驚愕の谷」で手に入れた「風神の鍵」を差し込んで開けると、「奇跡の宝箱」の中には、「伝説の剣」が入っていた。

この「伝説の剣」で切れないものは、何ひとつないという。

私は、ついに手にすることができたんだ。

 

だが、敵はもういない。

 

 

 

 

「私は歩いた」

 

私は歩いた。

どこに向かって歩いているのだろう。

敵はいない。
味方もいない。
時代は錯誤している。
今年で私は38歳だ。
今、私はどこの国の地を歩いているのだろう。

歩き始めて、もう3年が経つ。
いや、正確には分からない。感覚的には3年ぐらいだと思う。
あれだけ研ぎ澄まされていた私の感覚も、これだけ歩いていれば鈍くなってくる。
もしかすると、5年かもしれない。
もしかすると、まだ3ヵ月かもしれない。
もしかすると、私は歩いていなかったのかもしれない。
もしかすると、ここはもう地球ではないのかもしれない。

もはや何が正解で、何が本物か、私には一切分からなくなってきている。
それでも私は歩く。

靴の底はペロペロに擦り切れ、
地面の小石の尖った感触が、足の裏に直接、伝わってくる。
もう、痛みはない。
逆に、平らな地面を歩いたときの方が、
自分の足の裏に穴が開いていることを実感してしまい、痛みを感じる。

今日は、虫を食べた。

草を食べた。

川を飲んだ。

星が降ってきた。

よけた。

当たるととても痛い。

今日はよけられた。

今日はいい日だ。

 

今日はいい日だ。