「確かめるパンチ」

 

ついにきた。

 

決戦のときが。

 

相手の右手には鉄バット。
左手には鉄パイプ。

僕は素手。

 

相手が飛びかかってきた。

ボコボコに殴られた。

たくさん流血した。

たくさんたくさん流血した。

僕は入院した。

 

僕はあいつに負けたんだ。

 

入院3日目。

あいつが、お見舞いにきた。

 

そして泣きながら、土下座をして謝ってきた。

 

僕は、今にも飛びかかりそうな自分の気持ちを抑え、

あいつを許した。

 

でも、僕の右手は、ずっとあの形になっていた。

 

 

確かめるパンチ。

 

 

「確かめられた」

 

散歩に出かけた。

お巡りさんとすれ違った。

 

私は確かめられそうだったが、
どうにか下を向いてやり過ごした。

 

散歩を続けた。

何気なく後ろを振り返ると、お巡りさんが戻ってきていた。

 

やばい、確かめられる…!

 

私はとっさに隠れた。

お巡りさんが、必死に私を探している。

絶対に、絶対に、
私のことを、確かめたがっている!

 

私はもう我慢できなくなり、裸になって飛び出し、捕まった。

 

でもいい。

私は自分という人間を、他人ではなく自分で、

 

 

確かめられた。

 

「確かめるな」

 

リナ「ねえねえ、今日何する~?」

ミホ「カラオケいこうよ~カラオケ~」

リナ「ええ~~昨日も行ったじゃん~カラオケ!」

ミホ「カラオケは、2日連続で行くことによって完成されるのだ!」

リナ「え…、ミホ何言ってんの?」

ミホ「ウソではない。カラオケは2日連続で行くことによって完成される」

リナ「ほ、本当…?」

ミホ「ああ」

 

こうして2人は、カラオケに2日連続で行くことになった。

 

しかし、カラオケは完成されなかった。

 

 

どんな仲の良い友達に言われたことでも、
人の言うことを全て信じてはいけない。

 

何事も、真実は自分の中にある。

 

 

確かめろ。

 

自分で。

 

 

人のことは疑え。

 

 

確かめるな。

 

「確かめろ」

 

よく見てごらん?

 

君たちには見えているかい?

 

くだらないものや、必要のない情報に惑わされて、
本当に大切なものが見えなくなっていないかい?

 

男「私には見えています」

本当かい?

男「本当です」

じゃあ、今、君には何が見えているんだい?

男「あなたです」

それは、本当に大切なものかい?

男「はい、大切です。何よりも。  結婚しよう」

 

……ありがとう。

でもちゃんと自分の気持ち、確かめた?

 

男「いや」

 

確かめろ。

 

「卵が動いた」

 

目が覚めた。もう朝か。
僕は化粧を落とし、カーテンを左手で開けた。
冷たい世間の光が差し込んでくる。なんだかあまり寝た気がしない。
窓を右手で開けた。
世界の空気が僕を通り抜ける。

「ふう。」

今日は、なかなかいい「ふう」が出た。何だかいけそうな気がする。
僕は両手で窓を閉め、トイレに駆け込んだ。
シャーーーーーーーー
ジャーーーーーーーー
僕は後ろを振り向かずに、ドアを閉めた。

「着替える前に、朝食を食べよう」

僕は取り出しかけた着替えを放り投げ、タンスを引っくり返した。

「朝食、朝食、朝食」

僕はキッチンに飛び込んだ。

「食パン、食パンはどこだ?」

キッチンを全身でまさぐった。

「食パンがない!食パンがない!」

だんだんと僕に焦りが見えてきた。

「冷やしたか?」

すぐさま左手を伸ばし、冷蔵庫をこじ開けた。

「ない、ない、ない」

食パンがどこにもない。冷凍庫にもなかった。
昨日の夜まで、確かにここにあったのだ。僕の頭は混乱した。
全身が痩せ細ってきた。
身の危険を感じた僕は、思わずテレビを付けた。
どうやら、食パンの生産は終了したらしい。

「ふう。」

僕はリモコンを投げた。
卵が動いた。

 

『歯ブラシに見えた』

僕は食パンを諦め、冷凍していたご飯を温めた。

「おかずはどうしようか。」

即座に納豆に決まった。
納豆を混ぜる。納豆を混ぜる。納豆を混ぜる。僕は納豆を混ぜた。
カチーーーーン
ご飯が温め終わったようだ。
レンジを左手で開け、左手でご飯を取り出す。
しまった。まだ、飲み物が決まっていなかった。

「どうしよう。」

即座に烏龍茶に決まった。
僕は、納豆とご飯と烏龍茶を順番に顔の口に運んだ。
もう食パンのことなど、とうの昔に忘れていた。
今日の天気はいかがだろうか。
僕はテレビを付けた。
どうやら晴れらしい。
僕はリモコンを投げた。
何だあれは。

歯ブラシに見えた。

 

『歯磨き粉が消え失せた』

飯も食ったし、お着替えをしよう。
僕は一瞬で皿を洗うと、一瞬で着替え終わった。
何だか空気が湿っぽかったので、再び窓を開けた。
すると、日本の風が僕を乾かした。

「ふう。」

やはり今日は、いけそうな気がする。
さあ、出掛けよう。今日はデートだ。
しまった。
まだ歯を磨いていなかった。
僕は洗面所に突っ込んでいった。
歯ブラシを右手に持ち、左手で歯磨き粉を握ると、歯磨き粉が消え失せた。

 

『もう眠るしかない』

僕は歯磨きを諦め、スーッとするガムを食べた。

「美味い。」

ガムを吐き捨てると、携帯が鳴った。メールだ。

「今日のデート、3時間遅れます。」

僕は吐き捨てたガムを再び口に入れると、今度は思いっ切り吐き捨てた。

「あの女。」

携帯を布団に投げ捨てると、そこに食パンがあった。
僕は、ひとまず眠るのをやめ、食パンをこんがりと焼いた。
カチーーーーーン
食パンがこんがりと焼けた。

「食パンめ。」

僕は、食パンに噛り付いた。

「不味い。」

僕は食パンを投げ捨てた。
するとそこに、歯磨き粉があった。
僕は歯磨き粉を踏みつぶした。
その瞬間にメールがきた。

「やっぱり遅れません。」

何だか眠くなってきた。
もう眠るしかない。

 

『君は怒り狂っている』

目を覚ますと、もう外は暗くなっていた。
ピンピンポーーーーーン
インターホンが鳴いた。
玄関に転がり込み、ドアを開けると、そこには綺麗な女が立っていた。

「綺麗だ。」

その綺麗な女は、ドアを取り外すと、
ドカンと家に入り込んできて、部屋の真ん中に座り込んだ。
明るいところで見ると、そんなに綺麗ではなかった。

「そんなに綺麗ではないな。」

少し寝ぼけていた僕は、そう女に言った。
女は怒り狂った。

「君は怒り狂っている!」

 

『キスとかをした』

数分後、僕らは仲良くゲームをしていた。
夜になるにつれ、だんだんそういう気分になってきた。
女もきっとそうだろう。
僕はゲームの電源をうっかり消し、その流れでうっかり電気を消し、
女を羽交い締めにした。
女は無言だ。
無言の抵抗だろうか。
きっと心の奥底では、君は怒り狂っている。
だが僕はこの女ともう眠るしかない。
無言の女は、歯ブラシに見えた。
いよいよ、僕の心の歯磨き粉が消え失せた。
そのまま僕とその女は、朝になるまでキスとかをした。
朝になると、卵が動いた。

 

「寝言にならなかった」

 
今、君は、僕の隣で眠っている。
まるで死んでいるかのように。

しかし君は、死んでいない。
嚊がそれを物語っている。

嚊をすることで、君は生きているのだ。

君は決して寝言を言わない。
弱音も吐かない。

 
君が何か言った。

「私はもう駄目かもしれない」

 
君が初めて弱音を吐いた。

でも君は眠っていた。

 
君は寝言を言わなかったが、寝言を吐いた。

 
それは寝言にならなかった。

 

 

「音楽は破壊した」

 
今日も君はいつものように笑っている。

「何故、笑っているんだい?」

僕は尋ねた。
君は無言で僕にキスをした。

「何故君は、僕にキスをするんだい?」

君はそのとき無言で家を飛び出した。

 
僕は君を追いかけた。

そして、追い抜かした。

 
君は僕を追いかけた。
僕は逃げた。
どこまでも。
どこまでも。
誰もいないところへ。

誰も追ってこないところへ。

 
でも、そんな場所は地球上に存在していなかった。
地球上のどんな場所にいようと、
誰かが僕を追ってくる。
何かが僕を追ってくる。

僕は誰からも逃れられない。
何からも逃れられない。

 

諦めた僕は腰をおろし、音楽を奏でた。

そして音楽は破壊した。

 

 

「テサラ」

 

僕は、キリン。

 

動物園のキリン。

 

元・野生のキリン。

 

今日も人間たちが、僕を見て、「長い」と言っている。

 

そんな僕は、今日も人間たちを見て、「短い」と思っている。

 

飼育員の田村さんは、そんな双方を見て、「どっちもどっちだ」と思っている。

 

 

神様は、そんな三者を見て、こう言った。

 

 

 

「テサラ」

 

 

 

「小鳥が吐いた」

 

天気がいいので僕は外に出た。
外には何もなかった。

僕は何を期待していたんだろう。
僕は家に戻った。
左手で脳みそをまさぐり、僕は期待を取り出した。
期待はもっと鮮やかな色をしていると思っていたけれど、壁の色をしていた。
僕は、壁に期待を叩きつけた。
こうして僕の体から、期待は一切なくなった。

一方、床に落ちた期待は、ニヤリと笑い窓に向かっていくと、
あっという間に空へと飛び去っていった。

小鳥にぶつかった。

 

小鳥が吐いた。