「音楽は破壊した」

 
今日も君はいつものように笑っている。

「何故、笑っているんだい?」

僕は尋ねた。
君は無言で僕にキスをした。

「何故君は、僕にキスをするんだい?」

君はそのとき無言で家を飛び出した。

 
僕は君を追いかけた。

そして、追い抜かした。

 
君は僕を追いかけた。
僕は逃げた。
どこまでも。
どこまでも。
誰もいないところへ。

誰も追ってこないところへ。

 
でも、そんな場所は地球上に存在していなかった。
地球上のどんな場所にいようと、
誰かが僕を追ってくる。
何かが僕を追ってくる。

僕は誰からも逃れられない。
何からも逃れられない。

 

諦めた僕は腰をおろし、音楽を奏でた。

そして音楽は破壊した。

 

 

「ポロセ」

 

なんだか眠れない。

 

明日は早いっていうのに。

眠ろうと思えば思うほど、こういうのは眠れなくなるもんだ。

無になろう。

 

何も考えるな。

無だ。

私は無だ。

 
無って何だろう。

頭の中に何も無い状態。

次から次へと浮かんでくる言葉を、一瞬で排除していく。

その繰り返し。

そもそも、排除しなければと思ってる時点で、無にはなれていないんじゃないのか?

 

というか、無についてこんなにも考えてしまっている。

 

ダメだ。

 

何も考えず、無になるのだ。

 

私は無だ。

 

無だ。

 

無だ。

 

 

ポロセ。

 

 

 
ダメだ。

 

眠れない。

 

 

 

「カタジケハム」

 

気付くと僕は、走っていた。

 

ここはどこだ。

森だ。

木々をかき分け、僕は走る。

体は傷だらけ。

痛い。

痛い。

 

薬草を見つけた。

体中に塗りたくった。

痛い。

薬草だと思っていた草は、毒草だった。

体が紫色になってきた。

助けてくれ、助けてくれ・・・

 

声が出ない。

 

体も動かない。

 

カタジケハムも止まらない。

 

 
もう駄目か・・・

 

僕は腰を下ろし、空を見上げ、ゆっくりと目を閉じた。

 

その瞬間、生きることを諦めた僕をあざ笑うかのように、
カタジケハムが、止まった。

 

僕は悔しくて、ちょっと笑いながら、

最後に泣いた。

 

 

 

「ナメナメペーン」

 

あるところにナメナメペーンがいました。

ナメナメペーンは、朝食を食べません。

代わりに、人間を食べます。

今日も、3人食べました。

おじさん2人と、おばさん1人です。

ナメナメペーンは、電車に乗って仕事にゆきます。

17時に上がり、その後は、同僚と飲みにゆきます。

22時には自宅に戻り、眠る支度をします。

24時には眠ります。

27時に起きます。

28時にトイレにゆきます。

29時に悟りを開きます。

朝7時になると、死にます。

 

ナメナメペーンは、死にました。

 

 

 

「テサラ」

 

僕は、キリン。

 

動物園のキリン。

 

元・野生のキリン。

 

今日も人間たちが、僕を見て、「長い」と言っている。

 

そんな僕は、今日も人間たちを見て、「短い」と思っている。

 

飼育員の田村さんは、そんな双方を見て、「どっちもどっちだ」と思っている。

 

 

神様は、そんな三者を見て、こう言った。

 

 

 

「テサラ」

 

 

 

「ビルは破壊された」

 

ある日、ビルを壊したい衝動にかられた。

 

いつもの風景。
うどん屋の中。

エロ本を読みながら、
俺は、決断した。

 

「完璧に、ビルを破壊しよう。」

 

気持ちは高ぶっていた。
屈折しているわけでは決してない。
健康な体で、
心も充実している。
最高な日々と言っても過言ではない。

幸せで、
素敵な恋人もいて、
SEXもたくさんした。

早漏だけれども(笑)

楽しいそんな毎日を過ごしているけども、
血はやはり争えない。

ついに爆発した。

 

手にあったエロ本を叩きつけ、
隣の客に食べていたうどんをぶっかけ、
鳴き叫んだ。

荷物を抱え店を飛び出ると、
ぬるい空気をかき分け、
練馬の街を闊歩した。

 

ノッてきた。

 

走り出した。

 

左に曲がった。

二人殴った。

平常心を保てない。
本気で興奮しているようだ。

真正面に、ビルが現れた。

 

みんな、俺がビルを破壊することを知らない。

無造作に振りかぶった俺は、
目一杯、ビルを殴りつけた。

 

物ともしない。

 

やめた。

 

床に寝そべった。

妖術を使った。

楽に破壊できた。

 

臨時のベルが鳴り響く中、
ルージュを塗った女が、中から現れた。

レモンの香りがした。

 

ロイター通信によると、
わずか一瞬の出来事だったそうだ。

 

「ヲー・アイ・ニー」と二人は抱き合い、

 

ンジャメナにて結ばれた。

 

 

 

「ビルに忍び込んだ」

 

ある日、私はビルに忍び込んだ。

 

いつも私が通っているビル。

動かぬ証拠を残さぬように、
円滑に忍び込んだ。
音を一切立てずに。

監視員は寝ている。
給料泥棒めが。
口止めなどする必要がないな。
潔白なのだ、私は。

ここからが勝負。

サササと階段を上り、
静かにドアを開け、
筋書きのないドラマが始まる。

世話になっている上司のデスクに行き、
そっと引き出しを開けた。
ためらっている暇はない。

千葉達夫 部長。

通称、達っちゃん。

定年も近い。
とにかく横暴だ。
殴る。
睨む。
盗む。
眠る。
飲む。
働かない。
開き直る。
不機嫌。
平気で休む。
ホモ疑惑もある。
まず
みんなに嫌われている。

無理もない。
迷惑なんだ、本当に。
もう、私は我慢できない。

 

やる。

有罪になってもかまわない。
4年くらいなら入ってもいい。
らしく生きよう。
理不尽は排除されるのだ。
ルーキーのこの俺に。

 

歴史的な瞬間を迎えた。

 

ロックオンしたヤツの名刺を、
わずかに俺は抜いた。

 

ヲーズマンのように冷徹な表情の俺。

 

んん、いい仕事をした。コホー。

 

 

「ビルになっている」

 

朝起きたら、私はビルになっていた。

 

今までは、もちろん人間であった。
歌をうたっていた。
円満な家庭も築いていた。
起きたらビル。

考えられない。
気でも、
狂ったのだろうか。

毛などもちろんない。
声も出ない。
支えている、ただ。
下には、虫のような人間がうじゃうじゃ見える。

全てがおかしい。
世界が狂ったのか?
外の国は、今どうなっているのだ。
ただごとではないぞ、これは。
地球全体がおかしなことになっているに違いない。

 

月が出てきた。
点々と街に明かりが灯る。

トイレにいきたい。
何も下半身には、ついていないはずなのに。
荷物をたくさん背負っているみたいに、人が重い。
ぬるま湯に浸かった人間どもめ。

眠くなってきた。
野垂れ死にそうだ。

半目で街を眺めると、
光輝く
風景がみえる。

ヘドが出そうだ。

本当に出てしまった。

 

また、出てしまった。

 

みんな、気付いただろうか…。
虫は、気付いたようだ。
目をつぶったから。

もうじき朝がくる。

山が遠くにみえる。
有名な山だ。

夜が明けた。

 

ライブをする日だ今日は。

リキッドルームで。
ルイ・アームストロングのカバーを主に歌う。

列車が動き出した。

 

老人が、こちらを見上げている。

私も、老人を見下ろす。

 

ヲッカを突然、吹きかけてきた。

 

「んだコラ?!」・・・私は声を出せた。

 

 

「ビルを登っている間」

 

ある日、僕はビルの壁を登っていた。

いつもなら階段で登っていくのだが、
運動が最近足りていない気がしたので、
えんやこらと、壁を登ることにしたのだ。

「おはよー」「おはよー」と、社員の声が中から聴こえてくる。
課長の姿も見えた。
気付いてはいないようだ、こちらには。

曇り気味の空。
結構いい気温。
小鳥のさえずり。
爽やかな風。
下を見ると、人間が豆のように見える。

素っ裸も考えたが、
背広をちゃんと着ることにした。
そびえ立つ山が私を見ている。
ため息はやめよう。

力、
尽きるまで、
手がボロボロになるまで、
父さんは登るよ。

何を思う、息子よ。

憎んでいるかい?
沼に沈めたいかい?
妬んでいるのかい?
野放しにして、自由に生きてきた父さんを。

母はいない。
引っ越しも散々した。
不良にもなるよなそりゃ。
変な父さんですまん。

本当にすまん。

まだ私のことを、父さんと思ってくれているかい?
見てくれているかい?父さんのことを。

息子よ。

 

目立っているよ、父さんは今。
もうじき、ニュースにもなるだろう。

辞めさせられるかもしれない、会社を。
有名になるのと引き換えにね。
欲深いんだ、父さんは。

楽勝だよ、こんなビルなんて。
リスクは考えない。
留守に家をしばらくしてしまうかもしれない。
連絡もしばらくできないかもしれない。

牢屋に入るということだ、つまりは。

 

私は、しばらく身を隠します。

 

ヲンテッドされるだろうから。

 

 

ん?息子よ。何故、お前も登っている。