ある日、私はビルに忍び込んだ。
いつも私が通っているビル。
動かぬ証拠を残さぬように、
円滑に忍び込んだ。
音を一切立てずに。
監視員は寝ている。
給料泥棒めが。
口止めなどする必要がないな。
潔白なのだ、私は。
ここからが勝負。
サササと階段を上り、
静かにドアを開け、
筋書きのないドラマが始まる。
世話になっている上司のデスクに行き、
そっと引き出しを開けた。
ためらっている暇はない。
千葉達夫 部長。
通称、達っちゃん。
定年も近い。
とにかく横暴だ。
殴る。
睨む。
盗む。
眠る。
飲む。
働かない。
開き直る。
不機嫌。
平気で休む。
ホモ疑惑もある。
まず
みんなに嫌われている。
無理もない。
迷惑なんだ、本当に。
もう、私は我慢できない。
やる。
有罪になってもかまわない。
4年くらいなら入ってもいい。
らしく生きよう。
理不尽は排除されるのだ。
ルーキーのこの俺に。
歴史的な瞬間を迎えた。
ロックオンしたヤツの名刺を、
わずかに俺は抜いた。
ヲーズマンのように冷徹な表情の俺。
んん、いい仕事をした。コホー。