2025

台湾に来て早くも3年が過ぎた。
もう3年か。
気づけば台湾の南部、高雄に住んでいる。

非常に居心地が良い。
居心地が良すぎて、時間がゆるゆると過ぎていってしまう。
夏は暑いし、夏は長いが、台北に比べ雨は随分少ないし、湿気も少ない。
基本的にいつも晴れているので、心が自然と明るくなる。

この歳になって新しい人間と会うことが増え、しかもそのほぼ全てが台湾人。
良い出会いもたくさんあった。
今後も長々と関係が続いていきそう人や、毎週のように遊ぶ人も。
日本にいるときだと考えられない。
仲が良くても数ヶ月に1回遊ぶぐらいだったが、
一週間に2回も3回も一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだり。
遠出してみんなで音楽イベントにいったり、旅行に行ったりも。
それでも全然苦ではなく、むしろ1週間以上会ってないと会いたくなってくる大切な人間たち。

今まで日本人相手に、男女の関係以外でそんなこと思ったことがなかった。
とはいえ基本日本語通じないので、ノリで会話していることが多いが、
それでも日本人より分かり合えてる気がする。
自分は日本を出て本当に良かったんだと思う。

ただ居心地の良さから、ギラギラした気持ちがだんだんと薄れてきてしまっている。
このまま楽しく好きな場所で好きな人たちと生きていけたら幸せなのかな。
という甘えが心を侵食してきている。
飲まれてはいけない。
歳も歳。
あと数年が恐らく最後の勝負。
この年の切り替えを機に、少しずつ変えていかねばならない。

毎年そう。
今年こそは今年こそはで始まる1年。
来年こそはで終わる1年。
どこかで止めなければならない。
それが今年なのか、来年なのか、3年後なのか、もしくはないのか。
ないはダメだ。
死ぬ瞬間を考えたときに、このままだとまだ全然ダメだ。
きっかけを待ち続けたが、きっかけは現れない。
自分できっかけを作らねば。
ただそのきっかけが分からないから、今年は種をいっぱいばら撒こうと思う。
何がきっかけになるか分からない。
なるべく今までやらなかったことをやる。やったこともどんどんやる。
時間があるときは家にいないようにする。
家は悪魔だ。
前のめりに前のめりに。
いや、前屈みぐらいがちょうどいいかな。
常に前屈みで、何かあれば自然と足が前に出るような。
今年のテーマは「前屈み」と「種」。

2025年。おじいちゃんが死んだ。
99歳だ。
自分の2倍以上も生きている。
ということは自分の人生もまだ2倍以上あるかもしれないということだ。
ここまでの人生色んなことがあって頑張って生きてきたが、
これの倍の人生があるのか。しかも老いながら。
そのことを考えると、若干の絶望と困惑と急がねばという気持ちになる。
この2倍、何をして生きよう。

日本にいるときに思っていた死ぬ前に達成したい2つのこと。
「台湾に住む」、1つは達成。
もう1つもとっとと動かねばという気持ちと、まだまだ全然無理だという気持ちでなかなかまだまだ。
じゃあもっと達成することを増やさねば。
一度忘れかけていたが、やはり「残す」ということはしなければ。
でもその他が意外とない。
刺激はほしいが、マイナスの刺激はいらない。
基本、コミュニケーションが取りづらいという小さな刺激があるので、
今はそこまで求めていない。

あった。「金」だ。
おじいちゃんがいつも言っていた言葉。
「お金は本当に大切」。
そろそろ向き合わねば。
まあとにかく種を蒔こう。
その種が実らなくてもいい。とにかくたくさんたくさん蒔こう。
時間を無駄にせず。使った時間は無駄に思わず。
ソファーになるべく座らず。家にいず。
なるべく早く寝て、なるべく早く起きる。

そうだ。
今年は20年ぶりぐらいに心が落ちたときがあった。
自分はこんなにも心がないのかと。
意図的に心をなくしてきたけど、こんなことになってしまっているのかと。
台湾に来て、少しずつ心が広がってきた気がしていたが、まだまだだった。
心を広げるのは大変だし疲れるししたくないけど、台湾なら日本に比べたらマイナスに感情が働くことも少ないと思うし、少しずつ広げていこうかな。
とはいえ、心が落ちたということは、20年ぶりに感情が動いたということでもあるので、もしかしたら少しは変わってきてるのかな。
プラスの感情ももっと動いていったらいいな。
嘘のない感情。

気負うと良くないので、少しずつ少しずつ。
じじいになる前に、遅すぎず、速すぎず、時間の短縮。前に屈んで。

さあ、もう3時だ。寝よう。

また来年。

 

 

2022

2022年が終わる。
そして台湾にいる。

台湾に住んでいる。

気づけば2ヶ月が経っていた。

2021年9月頃、家の契約更新タイミング。
渋谷に住み8年が経っていたことに気付き、何故かものすごいショックを覚えた。
8年もずっと同じところに住んでいたのか。
なんてつまらないんだ。もうやめよう。
でも住みたいところも特にないし、これからどうなるか全く分からないし、もう家いらないか!

ということで、家をなくした。

そもそも住民票を今まで実家から移したことがなかったので、特に問題もなく、Air-bnbで暮らし始める。

2021年12月、会社を辞めた。

その後、1つお話をもらって1ヶ月半ハワイに滞在した後、同じAirbに戻る。
いったんAirbでという気持ちだったが、ここがまたとても素晴らしく居着いてしまった。
半分ホテルみたいなところで共用のキッチンもあり、色んな人とも出会った。

毎日ご機嫌なItalian、ぶっ飛んでるChinese、海外から騙されたお金を取り返しに舞戻ってきたJapanese、全身タトゥーだらけで家族のように心配をしてくれる管理人、そんな愉快な仲間たちと愉快な半年間を過ごした。

毎日のようにみんなで料理を作り、一緒に食べ、遊び、出かけ、パーティーをし、たまにちょろちょろ単発で働きながら、失業保険をもらいながら、先のことなどほとんど考えずお金を減らしつつ、楽しく日々を過ごしていた。

「楽しい」なんて、とうの昔に捨てたはずだったのに、この年になって「楽しい」ということの素晴らしさを知った。かけがえのない時間。

半年が経ち、Italianは母国に帰り、Chineseは大学院の試験が始まり、「楽しい」は終わりを告げた。

さあ、どうする。

0になったときに考えたことは、やっぱり死ぬときのことだった。

死ぬときに、後悔をしないようにしたい。
後悔を残したまま死ぬことは、多分何よりも辛いことだと思う。

そうならないように、一度きりの人生。
このご時世、いつ死ぬかも分からない。

もっと自由に。

やり残したこと。
パッと浮かんだのは、2つだった。

1つ目、台湾に住むこと。

2つ目、いつか子供がほしい。

2つ目は、まだできない。
相手どうこうもあるが、まず、自分の人生に一区切りをつけないと。

じゃあ、1つ目だ。
一刻も早く。住もう。

職を探した。

中国語はいつまで経ってもなかなか上達しない。
中国語が必要のない仕事。
見つかった。

もう、今までとは全くもって違う仕事。
まさか自分がやるとは思ってもいなかった仕事。
でもよくよく考えると、小学生か中学生の頃、一度だけ考えたことがあった。

きっかけは、とある台湾人のひとこと。
「向いてると思います!」

その言葉を鵜呑みにした訳ではないけど、
何故か考えもしなかったことが、ありかも、に変わった。
理由はよく分かっていないが、導かれている気がした。

そこから職を探し、割と早く決まった。

台湾に住みたい理由はまだ自分でもわかっていないけれど、
それを確かめに、何故自分が台湾に惹かれているかを確かめるためにも、住むことにした。
一つあるとすれば、台湾人と共に生きていきたい、ということかもしれない。

ずっと生きづらかった。
日本。

生きやすいように、自分が生きやすくなるように、仕事でも頑張った。
でも変わらなかった。
変えられなかった。

じゃあ自分が変えるんじゃない、自分を変えてしまおう。
どうすれば変わるか。

生きやすい場所で生きよう。

台湾に来て、2ヶ月が経った。

生きやすい。

人生で始めての感覚。
この2ヶ月間、一切イライラしていない。ストレスがない。
イライラしている人も0とは言わないが、ほぼ見ない。
そもそも感覚が違っている。

歩いていると、人にぶつかることがある。
大体の日本人は謝るか、イラッとするかの二択だ。

台湾人は違う。
特に謝らない。

ぶつかることがそもそも悪いと思っていないのだ。
人間、歩いてたらそりゃぶつかるっしょ、みたいな。
いちいち謝らなくていいよ。ぶつかるぶつかる。
空気のような感覚なのだ。

しかし一方で、謝謝はよく使う。
エレベーターで乗ってくるのをドアを開けて中で少し待っていると謝謝と言って入ってくる。日本人はすみませんと謝って入ってくる。

人と車は完全に対等だ。
信号がない横断歩道では、お互いバランスをとりながらここぞというタイミングで交差する。
電車内では皆大きな声で電話をし、同性同士が豪快にイチャつくが、誰もそれを気にも留めない。
割り込みなんてする人はおらず、急いで歩く人も少なく、偽物の笑顔は見ない。

この台湾人の感覚が、すごくしっくりくるのだ。

生きづらい理由は、しっくりこないことが多すぎたのかもしれない。
納得いかないこと、イライラしている人間が多すぎること、偽物の言葉。
分からなすぎる本心。裏の裏の裏の裏。
裏はもういい。
表の世界。

とはいえ、まだ2ヶ月。
これからどんどん悪いところも見えてくるのかもしれない。

だいぶ生活には慣れてきた。
金はない。
食は美味い。
物価は上がってきているが、それでも日本よりは若干安い。
給料は1/3以下。
部屋は寒い。
仕事は結構慣れてきた。
忙しいが、以前の比ではない。

さあ、2023年。

人生を区切るとしたら、第四章。

台湾編。

始まりました。

会社をやめた10の理由

2021年12月をもって、リアル脱出ゲームを制作/運営する株式会社SCRAPを退社した。

2014年に入社してから約8年。長かった。

これまでに何度か辞めようと思ったことはあったけども、決定打がなく、そして忙しいながらも居心地の良さや会社への愛もあり、気付けば8年もの月日が経っていた。

最終的に決定打という決定打はなかったものの、色んな要素が急激に重なり、結構急に「あ、辞めよう」と思い立ち退職を告げた。

そう感じたときからしばらく経ってしまったのもあり辞めた理由を言葉にするのはなかなか難しいけれど、いずれ振り返ったときに忘れないよう書き記しておこうと思う。

多分10こくらいに収まる気がする。


■その1「モチベーションの急低下」

10このうちの結構大きい部分がこれ。
一度、2019年に大きな波がきた。
今までものすごいたくさんのリアル脱出ゲームを作ってきたのだが、約束のネバーランドとコラボした『偽りの楽園からの脱出』を作り終えたときに、ある種満たされてしまった。
「これ以上面白いものは、もう自分には作れない」
「今後誰かが同じくらい面白いゲームは作れたとしても、これを大きく超えるものは作れないんじゃないか」
と結構強く思ってしまい、その後、もうリアル脱出ゲームは作れないと一度取締役に辞める相談もしている。
結局、海外、主に台湾に関わる案件を進めつつ、リアル脱出ゲーム以外の新規案件を生み出す部署にいったん異動してみようとなり、色々動こうとしている中、やつがやってくる。


■その2「コロナ」

SCRAPもコロナで大きく変わった。
リアルイベントに人が来れなくなり、そして来なくなり、経営が揺らいだ。
しかしそんな中、どうにかオンラインイベントに活路を見出し、一気に力を注ぐことになる。
自分がいた新規事業部は解体され、オンライン事業部が設立された。
その頃はわがままなど言える空気は一切なく、とにかく会社がなくならないようみんな必死で動いた。
オンラインというものに特別興味があった訳ではなかったけども、やれることはあるし可能性もある、とにかく今は会社のために頑張ろう、という気持ちですんなり異動を受け入れた。

が、SCRAPはもう一つ変わった。
リアル脱出ゲームはネタバレがあるため、基本一度しか体験できない。
そんな特殊なゲームのため、リピートさせるには新しいゲームを作らねばならない。
その新しいゲームを体験した人をリピートさせるには、さらに新しいゲームを作らねばならない。
つまり、リピートさせるには、永遠と新しいゲームを作り続けなければならないのだ。

カラオケはどんどん曲が増えていくのでリピートできる。
ボーリングは何も変わらなくてもリピートされる。
コンシューマーゲームやオンラインゲームも、基本何度でも繰り返し遊べる。

映画だけは違う。
リピートはできるものの、基本は一度観たら終わり。
また映画館に来させるためには新しい映画をどんどん上映していかなければならない。

映画とリアル脱出ゲームが大きく違うところは、映画はその新しいものを作る会社やチームがものすごい数あるけれど、リアル脱出ゲームはSCRAPのみ。
自分たちだけで、ものすごい数のゲームを作り続けていかなければならないのだ。

そもそもがそんな特殊で大変なものなのに、コロナの影響でそこが更に加速した。
とにかく数を打とうと。

僕が入社してから退社まで言い続けてきたことが一つある。

「リアル脱出ゲームを気軽に何度でも遊べるものにするべき」

これができたとき、この社会が大きく変わるんじゃないかと思っている。

この社会には、遊べるものが少なすぎる。
「遊び」の選択肢は、恐らくここ何十年も大きく変わっていない。
食事、酒、カラオケ、映画、ゲーセン、ボーリング、ダーツ、ビリヤード、カフェ、買い物、ドライブ、美術館、散歩、ライブ、クラブ、等々。ずっとあるものばかり。

このラインナップに新たに入れられものを作りたくて僕はSCRAPに入社していた。
そのためには「気軽」で「何度でも」参加できることは必須条件で、ずっとそのことを訴えてきたのだが、どうにもこれが誰にも響かなかった。
そもそも目的が違っていたのかもしれない。

最後の最後でどうにか生み出せたのが、『ミステリータワーからの脱出』。
この「何度でも」という仕組みを作るのが難しい中、「何度でも続きから遊べる」という仕組みを成り立たせ、この世に生み出すことができたのだ。
ただこのシステムをつくるため、莫大なお金がかかってしまった。
こんなこけたら大打撃の経営が危ない中、この企画をGOしてくれたときの取締役は本当に男気があったと思う。

一度この企画はポシャろうとしていた。
予算を作成し、取締役にプレゼンしたとき「こんなものGOできるわけがない」と一蹴された。
僕はどうしてもこれを世に出したかったので、もう一度だけチャンスをもらった。
恐らく取締役は、この企画を少なくとも今は通すつもりはなかったのだと思う。
ただ僕は一刻も早くこれを世に出すことが、最終的にSCRAPを救うと信じていた。

規模と予算を可能な限り縮小し、SCRAPの未来と、上に書いたような個人的な思いの丈を、思いっきりぶつけたとき、取締役はその場で即GOを出した。

多分、今までの人生で一番のプレゼンだったと思う。

話がどんどんズレていってしまう。
まだ、2つ目だ。

とにかく、この「数を打つ」「作り続ける」というのが、僕はどうにも正しいと思えなかった。
一度全員で立ち止まってでも、「どうしたら少ない数でリピートしてもらえるか」「どうしたら少ない数で参加率を上げられるか」を考えるべきだと思っていた。

この「数を打つ」ことで、ものすごい弊害が生まれてしまうからだ。
その弊害、「忙しさ」がもう一つの理由。


■その3「忙しさとの対価が見合わなくなった」

SCRAPを辞めていく人は、あまり理由を公表せず辞めていく人が多いが、恐らく一番多い理由としては、「忙しすぎる」だと思う。
ただこの「忙しさ」を、「楽しさ」や「やりがい」や「お金」が越えていっているときに、その忙しさは乗り越えられる。辞めていった人たちは、「忙しさ」が、それらに見合わなくなってしまったのだと思う。実際、自分もそうだ。

SCRAPは居心地が良い。面白い人間も多いし、良いやつも多いし、ほどよく緩く、とても自由で気持ちを大事にする。自分にとってはすごく良い会社だった。
基本的に仕事は楽しいし、やりがいも自分で作ってきた。
しかし、『偽りの楽園からの脱出』を作り終え「やりがい」が減ってしまい、コロナが始まり「楽しむ」余裕もなく作り続けねばならなくなってしまったのだ。


■その4「ガスがとまった」

そんな忙しすぎる日々を過ごしているとある朝、シャワーを浴びようとしたらお湯が出ない。
ガスがとめられてしまったようだ。

支払いができてないことには気付いていた。
冷たいシャワーを浴びることも別にそこまでのことではない。
ただ、コンビニにガス代を支払いに行く余裕もないほど忙しいんだと思ったときに、そこまでの対価は今あるのか、何のためにそこまで頑張っているのだ、俺は冷たいシャワーを浴びてまで頑張る理由はあるのか、と思ったときにふと辞めることがよぎった気がする。
完全にこの瞬間に辞めようというときはなかったのだけれど、強いて言うならこの「冷たいシャワーを浴びたとき」なのかなという気がしている。


■その5「やりたいものだけやれなくなった」

僕はだいぶわがままを言ってきたと思う。
やりたくないものはやりたくない。これは結構働く、そして生きていく上で大事にしていることで、やりたくないものを「やりたくない」と言えるように、その分頑張ってきた。
自分や自分たちで企画したり、そもそも自分のやりたい方向に変えていったり、興味あるものに積極的に手を挙げていったり、やりたいものだけで自分の仕事が埋まるようにしてそこで結果を出し、やりたくないものが降ってきたときに断れるような状況を作り出していった。
それがコロナで通じなくなった。
そして、もう一つ、


■その6「誰でもやれることをやりたくない」

これも結構生きていく上で大事にしていることで、自分がやる意味がないもの、自分じゃなくても誰かができるものには、ものすごい拒否反応が出てしまう。
それをやった瞬間に自分の存在価値というか生きている価値がなくなるような気がしてしまい、ずっと避けてきた。
それがたくさん降ってきた。

自分にしかできないものはあると思っているけれど、「誰にでもできるもの」「誰かができるもの」は気持ち的にも、多分能力的にもできないんだと思う。基本常識がなく常識を身に付けることが苦手で、マニュアル通りにやることができない。
そして「誰かが考えたものを形にする」これも結構苦手で、どうしても自分の色をたっぷり入れないと気が済まず、ほぼほぼできているものを「これを世に出してくれ」と言われるとものすごく拒否反応が出てしまう。


■その7「プロデューサーが向いてない」

そしてもう一つ苦手なものとして「お金」がある。
そもそも数学的な部分でも苦手ではあるのだが、「お金」に対する興味がどうにも持てず、いや興味というかお金は稼がなければならないし、プロデューサーが一番頑張ることは「お金を稼ぐこと」だと思うのだけれども、どうしてもそこより「面白いものや新しいものを作りたい」という方が勝ってしまっていた。
そもそもその時点でプロデューサーという仕事にあまり向いてないのだと思うけれど、コロナで「お金を稼ぐ」が圧倒的正義になった今、そして自分でもそれが正義で正しいと思った今、お金を稼ぐことが苦手な自分には、お金を第一に考える働き方はなかなか苦しかった。

もちろんお金のことを全く考えていなかった訳ではなく、上に書いたように、「気軽に何度でも遊べるゲーム」を作ることで将来的にものすごい利益をもたらすんじゃないかみたいなことは考えてはいた。
ちなみにそうしたゲームを生み出すことは、全体で作るゲームの数を減らすこともでき、そうすることにより社員の忙しさが減り辞める人間も減り、色んな良い効果をもたらすとも思っている。

僕はラジオの仕事をしているときからこれまで、働いているときはずっと忙しい生活をしている。
何なら忙しいのが好きだったりもした。
ただ最近は考えが変わってきた。


■その8「忙しいは正義ではない」

忙しさは人間を不安定にさせるし、良い仕事をするには良いプライベートを過ごすことも大事だなと最近ひしひしと感じるようになった。
以前はそんなこと考えたこともなかったが、「良いプライベートを過ごすために頑張ろう」とか「プライベート楽しいから忙しいけど仕事頑張ろう」みたいなのもありだなと思ってきている。
そしてプライベートが充実することで心が安定し、良いパフォーマンスを発揮でき、楽しく仕事もできる。ちなみに、忙しいは正義ではないし、イライラしながら仕事をする人間は悪だと思ってます。
そう思いつつもどうしてもイライラしてしまうこともあったけれど、なるべくアホなふりしてヘラヘラしてるようにしていた。イライラは人に伝染し、イライラすることでストレスが溜まり楽しくなくなり、もう本当にいいことが一つもない。今すぐやめましょう。


■その9「会社より自分が大事だった」

コロナの影響で会社がお金を稼ぐことが第一になるに連れ段々と心が追いつかなくなってしまったのだが、会社がそうなることは当然で、本当に存続が危ぶまれていた。
何なら今もその状態は続いている。
みんな必死で会社一丸となって戦っていた。
どうにかこのコロナが落ち着くまで耐えよう、あと数ヶ月、あと一年、自分は捨てとにかく会社のために働いた。

未だにコロナ禍は続いている。
さすがに心がもたなくなった。自分を捨て続けるには長すぎたのだ。
SCRAPへの愛はあるけども、どうにも自分への愛の方が強かった。

ちなみに、自分なんかよりもSCRAPへの愛のある人間は社内にたくさんいたけれど、自分よりSCRAPの未来のことを考えて働いていた人は役員を除いてはいなかったんじゃないかなと自負している。
自分が担当した案件には、必ずと言っていいほどSCRAPの未来のためになる要素を入れ込んでいたし、むしろ未来のSCRAPのために毎回作っていたという方が正しいかもしれない。
「お金に興味がなかった」というよりかは、「単発でお金を稼ぐのは任せた!自分は未来の大金のために頑張るぜ!」という気持ちが強かったような気もする。
まあ結局、そこまで大きな結果は出せてないけども。

そして『ミステリータワーからの脱出』のような例外を除き、全員が「未来」より「今」を優先しなければならなくなり、魂がどこかに置いていかれてしまった。

これを見た誰かが拾ってくれますように。


■その10「気持ちがないやつは迷惑」

そして、一番の理由としては、恐らくこれ。

そんな感じでモチベーションや気持ちが段々なくなってきてしまっている中、どうにか周りにそれがバレないように必死に隠してきた。
が、それが長くなってくるとどうにも隠しきれず漏れ出てしまっていることが自分でも分かり、これ以上いたら迷惑だ、と思うようになった。

元々、気持ちがない人、やる気がない人がチームにいるのがものすごく嫌だった。
そんな人を見るとどうしてもイライラしてしまうし、みんなのモチベーションも下がってしまうし、そんな人が一人でもいると良い作品は生まれない。本当にそういう人はチームから外れてほしいと思っていたのに、とあるときから自分がその存在になっていることに気付き、絶望的な気持ちになった。

決定打はなかったと書いていたけれど、これらの9個の理由が同じようなタイミングで重なり出し、この10個目がドンッと積み上がったときに退職を決めた。

と、どうにか10個にまとまった気がしたが、よくよく考えたらまだまだ理由はあったので、また今度書こうと思う。
会社に関わることは以上で、あとは自分の人生観においての理由。

 

簡単に言うと、刺激不足。
そろそろ頭使わないと腐ってしまう。
他のことしたい。
ちょっと真面目に生きすぎた。
いったん、0にしよう!

だ。

38歳、無職、家なし、恋人なし。
さーて、どう生きよう。

久々にゾクゾクしている。

 

 

「秘密のキス」

俺は今せめぎ合っている。
目の前には極上の美人。
周りには誰もいない。
目の前といっても、本当に目の前だ。
俺と彼女との距離、わずか5cm。

これでキスをしてしまったら、一生妻に負い目を感じて生きていかなければならない。
しかしキスをしなかったら、一生後悔して生きていくことになる。
負い目と後悔。愛情と欲望。男と女。

その距離2cm。
どうしよう。したら終わる。したら終わる。
この積み上げてきた純白な10年間が無駄になる。
耐えろ。耐えるんだ。

ふう。
やめよう。
距離を20cmに離した。
キスをしたところで何も生まれない。
何も残らない。
失うものの方が何百倍も多い。
一時の快楽に溺れてはいけない。

その距離1cm。
彼女の方から近づいてきている??
どういうことだ。
彼女は私とキスがしたいのか?
そもそもこの綺麗な人は誰だ。
もしや妻からの刺客?
だとしたら絶対にすることはできない。
なんだかそう考えたら急に欲がおさまってきた。
この人は僕とキスをしたいわけではなく、恐らく妻からの金のために自分の唇を犠牲にしている。
というかいくら貰ってるんだ、この女は。
妻は一体どこからそんな金を出しているんだ。
私が働いて手に入れた金じゃないか。
私は自分の金とキスをするというなんとも情けない行為をするところだった。
距離を10cmに離した。

おや、彼女が僕をうっとりとした目で私を見ている。
この目は本物だ。
この女は完全に私にうっとりとしている。
彼女は金をもらっていない。
じゃあキスしても問題ないな。
するか。
妻にも言わなければバレない。
1回だけしよう。
引きずらず、たった1回の思い出にしよう。
その距離を3cmに戻した。

彼女がスッと顔を後ろに引く。
その距離30cm。
なぜだ。
この女はキスをする気がないのか。
じゃあさっきのうっとりとした目は何だというのだ。
まさか眠いのか?
なら逆にチャンスだ。
寝させて、その隙にしよう。
早く寝ろ。
私は念じた。

想いは届いた。

彼女は立ったまま眠りについた。
さあ、もうキミの唇は私のものだ。

確かに犯罪だ。
しかしそっとキスをすれば彼女にすらバレない。
誰も知らない、私だけのキス。

私は一切の音が出ないように、ゆっくりと優しく彼女にキスをした。
彼女はゆっくりと目を覚ました。

彼女は妻だった。

「先祖代々受け継がれたキス」

トオル「いい景色だね、ミホさん」
ミホ「はい、そうですねえ」
トオル「こんな綺麗な景色をミホさんと見れて良かったな」
ミホ「あ、そうですか。それなら良かったです」
トオル「でもこの夜景より、ミホさんの方が100億万倍綺麗だよ」
ミホ「あ、、はい」
トオル「ミホさん」
ミホ「…はい?」
トオル「好きです。僕と付き合ってください」
ミホ「ごめんなさい」
トオル「え、、何でですか??」
ミホ「私、トオルさんのこと、何とも思ってないです」
トオル「そ、そうだったのか・・じゃあ、せめて!」
ミホ「せめて?」
トオル「せめて、僕と先祖代々受け継がれてきたキスをしてください!」
ミホ「・・はい?」
トオル「お願いします!」
ミホ「何ですかそれ?」
トオル「大丈夫!すれば分かります!」
ミホ「いやいや、しないです」
トオル「いいから!目をつぶって!」
ミホ「やめてください、怒りますよ?」
トオル「何で君が怒るんだ!せっかく僕が告白したっていうのに僕の気持ちを踏みにじって!何てひどい女性なんだ。謝れ!君が僕に謝るんだ!」
ミホ「え、何言ってるんですか?」
トオル「君は我が西山家先祖代々受け継がれてきた気持ちを裏切ったんだ!罪を滅せ!」
ミホ「…私が、西山家の先祖代々の気持ちを踏みにじってしまったの?」
トオル「そうだ。このままでは西山家は滅びる」
ミホ「だめ!そんなのだめ!私なんかのせいで滅びてほしくなんかない!」
トオル「じゃあ、罪を滅ぼすな?」
ミホ「はい。私、氷原ミホは、罪を滅ぼします」
トオル「では、いざ受け止めたまえ。西山家先祖代々受け継がれてきたキス」
ミホ「はい。いざ!」
トオル「スーーーー、ハーーーーー、スーーーー、ハーーーー。いざ!!!!」

ミホ「トオルさん」
トオル「ん?」
ミホ「私の中に、西山家先祖代々の方々が入ってきてます」
トオル「先祖代々の皆さんは、何かミホさんに言っているかい?」
ミホ「はい。聞こえてきます。『西山家へようこそ』『西山家へようこそ』と聞こえます」
トオル「良かったですね。先祖代々の皆さんは、ミホさんのことを受け入れてくれたようですよ」
ミホ「え、本当ですか??嬉しいです。これで罪滅ぼしはできましたかね?」
トオル「いや、あともう一歩です。今から先祖代々受け継がれてきたSEXをしなくてはなりません」
ミホ「え、でも、それはちょっと・・」
トオル「西山家をミホさんに注ぎ込まねばなりません!」
ミホ「でも、それだと、西山家と氷原家が一緒になってしまう!」
トオル「西山家と氷原家が一緒になって何が悪い!水と氷が混じり合うように、酸素と二酸化炭素が混じり合うように、夢と現実が混じり合うように、トオルとミホも混じり合うのだよ!」
ミホ「は、はい!」
トオル「さあ、ラブホテルに行こう!」
ミホ「ラブホテルに行こう!」

「キスの味」

「なあ、キスってしたことあるか?」
いや、ない。
「キスってどんな味すると思う?」
別に味なんてしないんじゃない?リップクリームとか口紅塗ってたらそれの味
「お前、冷めてるなあ。じゃあ何も唇につけてなかったとしたら何味?」
ハズレだったら唾液の味、小ハズレだったら少し前に食べた食事の味、当たりだったら無味。
「無味が当たりって、じゃあなんで人はキスするんだ?味もしないのに」
味がしなくたって、人は何でもするよ。人を殴っても味はしないし、殺しても味はしない。でも人はする。
「殺しとキスは違うだろ!」
一緒だよ。どっちも人をだめにする。
「でも、食事は味がするから食べるじゃないか」
味はおまけ。生きるために人は食う。唇に味をつけるのと同じように、食事にも味付けをする。味なんておまけだよ。
「だからキスはなんでするんだよ?」
知りたいか?
「知りてえよ!」

チュッ

何味だった?
「世界が見えた。」

宇宙も見せてやろうか
「はい。」

チュッチュッ

どう?
「ロケットの味がしました。」

ぶっとんだってこと?
「前にロケットを舐めたときと同じ味がしました。」

あ、お前!!!
「そう、俺はロケット舐め舐めお化け。
お前は偽ロケットだ!!!!さらば!!!!!」

ロケット舐め舐めお化けは、またロケットを舐めに宇宙に飛び立った。
被害はまだ止められない。

「全人類待望のキス」

中国とアメリカが戦争を始めた。

両国のトップは仲が悪い。
中国のチューさん。アメリカのアーメストロングさん。

昔二人はとても仲が良かった。
よく一緒に遊びに行き、お互いの精神論も真剣にぶつけ合った。

しかし、ある日突如二人の関係は音を立てて崩れた。
原因は、目まぐるしく変化した、経済的なアレと軍事的なアレと国際的なアレだった。

激しくなる軍事攻撃。
両国の半分がなくなった。
このままだと両国とも消滅してしまう。

アーメが受話器に手を伸ばす。

アーメ「久しぶりだな、私だ」
チュー「あらあら、どうなされたのですか?こんな最中に」
アーメ「このままだと、お互い大変なことになりそうだが、どうだね?」
チュー「そうですねえ、そろそろ引いてくれませんか?」
アーメ「いやあ、それはできないねえ。なんせ私はアメリカのトップだからな」
チュー「あら、そうですか。ではどういったご用件で」
アーメ「そろそろ決着をつけよう。ただ、人が死なない方法で」
チュー「そんな方法あるんですかねえ?」
アーメ「・・・そんなものありまくるじゃないか。スポーツだっていい、格闘技だっていい、芸術作品や、技術力だって勝負できる!」
チュー「うーん、では、くじ引きにしましょうか」
アーメ「くくくくじ引き~~??」

こうして二人は全世界で生中継される中、国同士の勝敗を決めるべく、くじ引きを始めた。
公平を期するために、くじ引きはインドのTOPが作成した。

元々「アメリカの勝ち」「中国の勝ち」の2枚だけという話で進んでいたが、それではあまりにもあっけない。そんなので国の勝敗が決まってたまるか。という意見が殺到し、まったく関係ない内容も入れようとなっていった。
真っ白の箱の中に入れられたのは、全部で10枚。
全世界の視聴率は、99,99%
全ての人間が注目する中、まずはアーメさんから引くことになった。

実はどちらが先に引くかはモメにモメた。

両国とも、先に引きたいと一歩も譲らなかった。
しかし、3日と8時間による話し合いにより、中国が後でアメリカが先に引くこととなった。
話し合いでも解決できたのだ。

時刻は、日本時間12時。
ステージに上がる、アーメ。
緊張の一瞬。

ゆっくりと深呼吸をし、右手を豪快に箱に入れ込む。
ガサガサガサガサガサ。
約5秒間、箱の中をまさぐり、手を止める。
どうやら1枚選んだようだ。
そして勢いよく、手を引き上げ、紙を開き、堂々と高く掲げる。
カメラがズームアップする。

全世界が目を疑った。

[アーメとチューがハグ]

ザワザワザワザワ

会場の空気の違和感を感じ取り、紙の内容を自分の目で確かめるアーメ。

「Hahahahahahahaha!」

笑った。

アーメ「Hey、チュー。ハグだとよ」
チュー「やれやれ、とんだ世界のお笑い者ですな」
アーメ「インドのやつ、やりやがったな」
チュー「こんな世界中の人間が見守る中、敵対する両国のトップがハグをしたら、
戦争どころじゃなくなりますねえ」
アーメ「いやーどうすっかなあー。でも引いちまったからなあー」
チュー「そうですねえ、仕方がないですかねえ」

どよめく空気の中、ゆっくりと近づいていく二人。
そして、全世界が注目する中、二人は少し恥ずかしそうに笑い、抱き合う。

1秒、2秒、3秒

そして、チューが口を近付ける。

チューが口を近付ける????

受け入れる、アーメ。

受け入れる、アーメ????

そのまま舌を絡ませる二人。

舌を絡ませる二人いいいい????

5秒、10秒、30秒

観客の一人が立ち上がり、涙を流しながら拍手をする。

そして、何人もの人が立ち上がり続く。

世界中のテレビの前の人々も続く。

世界中が、スタンディングオベーションだ。

座っている人間なんて一人もいない。

全員が涙している。

世界が今、一つに!

全人類待望のキス!!!!!!

「土壇場のキス」

ー学校の体育館裏ー

タケオ「好きだ、キミのことが好きなんだ」
ミイコ「ごめんなさい、私はそんなに好きじゃないです」
タケオ「何でだ??こんなにも好きだっていうのに!」
ミイコ「あなたが私をどんなに好きだろうと関係ないです。さようなら」
タケオ「ちょっと待ってくれ!じゃあどうしたらいいっていうんだ、この気持ちは!」
ミイコ「知りません。他の人を好きになってぶつけてください」
タケオ「無理だ、キミ以上に好きな人なんて、この先できる気がしない!」
ミイコ「あなたの事情は知りません。それじゃあ、もう行きますね」
タケオ「待ってくれ!!本当に好きなんだ。僕以上にキミを幸せにできる人なんて一人もいない!絶対に幸せにするから」
ミイコ「私はもう十分に幸せです。もう、本当に行きますね」
タケオ「待ってくれ!リョウコ!!!!」
ミイコ「リョウコ・・?誰??」
タケオ「隙アリ!ぶちゅーーーーーーーーーーーーーーーー」
ミイコ「・・・・・・・・・・・・・・ハヘハヘハヘ~~。タケ~オヒャンンン~~」