やばいヤツは突然現れる。
そいつは、死体でも入っていそうなほどでかい荷物を背負い、目の前に現れた。
名はエイジ。
何やら、長野の方まで歩いていくつもりだったらしいが、
途中、道が通行止めになっていたらしく、 進路を変え、こちらにやってきた。
彼と知り合ったのは、確か、ここ1・2年。
僕は、未だに彼のことをよく知らないし、
彼が今までどういう人生を歩んできたのかもあまり知らないが、
何となく心の奥底に似たようなものがあってそれで繋がっている気がしているが、
それが何なのかよく分からないけども、とにかく導かれて彼はやってきた。
その日は遅かったので、飯を作り食べ、酒を飲み話し、
トランプを切り遊び、 体を横にし眠った。
次の日、僕らはバスに乗った。
二方向の山に向かう二つのバスがあり、 魂が導かれたほうのバスに乗り込んだ。
行き先は決めなかったが、目標を5つ決めた。
■バスケットをする
■絶景を観る
■きれいな川にはいる
■よき飯をくう
■テンションがぶち上がる瞬間を味わう
結論から言うと、 行く先では目標のことなど忘れていたし、
バスケがサッカーに変わってはいたけれど、
僕らは、5つ全てを達成した。
それも、自然と。
この日、僕らは完全に導かれていた。
まずは、藤野のローカルフェス「ひかり祭り」が行われたという、
旧牧郷小学校に辿り着いた。
ここでボールがあったのでサッカーをした。
血を流した。
バスがなかなか来ないので、歩いて進んでいくと、絶景スポットに遭遇する。
例のごとくデジカメが壊れてしまい古い携帯カメラなので伝わりにくいとは思うが、
トンボが舞い踊るとてもよき眺めであった。
ハッピードリンクショップでドリンクを頂き、
やはりバスは来ないので、また歩く。
そこには川があった。 きれいな川。
家の周りの川は割と濁っているが、ここの水は透き通っていてきれいだ。
というか何だこのスポットは。
かなりやばい場所を見つけてしまった。
当然、やばい場所にはやばいヤツがいる。
そして、やばいヤツは突然現れる。
敬う神と書いて、敬神さん。
ただならぬ佇まいをしていたので、 一瞬、話かけるか戸惑ったが、いってみた。
音楽をやっている方で、今からこの川で自分の歌を録音するらしい。
ここは、彼にとってもとっておきの場所であった。
そして、ものすごい家が近所だった。
タバコとお茶をくれた。
いい人だ。
連絡先を交換し、僕らはバスに乗り込んだ。
気付くと終点。
折り返しのバスが割とすぐに出るので、一瞬だけ降りてみると、
一緒に降りたおばあちゃんが話しかけてきた。
一瞬のはずが、そのまま僕らはおばあちゃんと共に歩いていた。
彼女によると、少し先の秋山温泉でご飯を食べられるらしい。
「たったあげ」もあるようだ。
その温泉からもバスが出ているという情報を得、 バイバイを言い合い、僕らは向かった。
よきご飯を食べた。
ヤマメの唐揚げと、たったあげを食べ、 バスが出るまでの30分ゴロゴロしていたら、
バスの時間を勘違いしていて、次出るのは2時間半後だということが判明した。
僕らは勝負に出た。
ヒッチハイクだ。
僕は未経験だが、エイジくんは常連者。
外はもう暗かったので、半分諦めモードの中、
エイジくんの挙げた最初の右手の親指で、車は停まった。
もう停まるが当たり前のような停まり方で停まった。
テンションがぶち上がる。
そしてやはり、やばいヤツは突然現れる。
名はチャルさん。
いくらか年上の男性の方だった。
「藤野駅の方に行ったりしますか?」
「うん、行くよー」
「駅より右にいった橋の方なんですが…」
「あ、そこ通るよー」
こうして僕らは、完全に導かれて、家まで帰ってきた。
さらにびっくりなことに、 僕はチャルさんの作った、まな板を持っていたのだ。
昨日も、そのまな板でご飯を作った。
そして、僕は基本、何かのブランド名が書かれたものを
飾ったりぶら下げたりしないのだけれど、
何故かこのタグだけは、キッチンの電気にぶら下げていた。

これは、自分でも分からなかった。
ぶら下げている瞬間も、 何で自分はこれをぶら下げているのかよく分からず
不思議な気持ちでぶら下げていたのだが、ようやく意味が分かった。
こういうことだったのか。
こうして5つの目標を導かれ達成した僕らは、 缶ビールで祝杯をあげ、
ヤツはまた大荷物を抱え、去っていった。
僕は、よきところに住んだ。
よきところに導かれた。
今週末、藤野の山奥のキャンプ場で、
「こもりく」というフェスがある。
そのフェスに、敬神さんもチャルさんもいる。
そして、ヤツもいる。
ついに、彼の演奏を生で観るときがきた。
僕が、人生で最も心を動かされた彼の音楽を、
この目で、この体で、みてこようと思う。








