藤野に住み出して、約3ヵ月。
僕は、ほとんど家にこもってばかりで、
自分の住んでいるところがどんなところなのか、 未だによく分かっていない。
駅でいうと、
(都心)―――――高尾―相模湖―藤野―上野原―四方津―
と続いていく。
都心から高尾駅までは、ずっと東京都で、
上野原駅より先はずっと山梨県となるので、
相模湖駅・藤野駅だけが、神奈川県という、 すごい変なところに住んでいる。
簡単に描くと、この辺だ。
このぐらいのことと、
周りが山ばっかりということは分かっているのだが、
やはり車を持っておらず歩いて見てまわらなければならないので、
なかなか詳しいところまでは分かっていない。
高尾、相模湖、上野原辺りまでは、それぞれ1・2回ずつは行ってみたのだが、
上野原より先は、未知数だ。
今日行ってみた。
四方津に。
少し話は逸れるが、
『SOIL』という、僕の好きな漫画がある。
「そいるニュータウン」という新興住宅地に、異物が入り込んだことによって、
奇妙な事件が起き、謎を解き明かそうとすると、さらに謎が謎を呼び、
謎の中にグワングワン飲み込まれていって、 「そいるニュータウン」からも
抜け出せなくなり、住人や町全体がおかしくなっていって大変だ大変だ!
というような漫画なのだが、
その「そいるニュータウン」が、
四方津にあった。
奇妙な事件が起きた。
四方津駅に着き、
まず駅周辺を写真に収めようとカメラを起動させると、
画面が真っ黒になった。
過去に撮った写真は見られるのだが、 「今」を収められなくなってしまった。
何度電源を入れ直したり、電池を取り外してみたり、いろいろいじってみても、
全く変化はなく、一向に画面は「黒」しか映し出さない。
と同時に、携帯が壊れた。
電源は入っているものの、 ボタン操作ができない。
当然、写真も撮れない。
何だこれは。
証拠は何も残させないということなのか?
何の証拠だ?
彼らは何を隠そうとしているんだろうか?
僕の住んでいる藤野も変な町だが、 ここ四方津も、とても変わった町だ。
まず駅のすぐ前に、 山の上に続いていく、でっかい筒状のエレベーターがある。
エレベーターは200m先まで、斜めに上がっていく。
エレベーター乗り場の下に、軍手が落ちていた。
もう、この軍手の指の形が、その異様さをそのまま表していた。
ちなみに、携帯は何度か電源を入れ直したら直った。
ここから載せていく写真は、全て携帯で撮影したものになる。
カメラはずっと故障したままだった。
5分くらいだろうか。
エレベーターに乗り、山を登っていくと、 そこには、町があった。
山の中に、町があった。
その名も、ニュータウン「コモアしおつ」。
怪しい。
町を歩くと、 そこにはアパートなどは一つもなく、全てが一軒家だった。
山の中なのに、道はしっかり整備され、 優しい色をした家々が綺麗に整列している。
山の中なのに。
そして、恐ろしく無音。
人も車もほとんど通っておらず、 ただただ家がズラリと並ぶ。
こんなにも無音なのかというぐらい無音。
町は、恐らく1時間もあれば一周できるんじゃないかというぐらいの広さ。
「平和」という言葉が満ち溢れているようで、
本当に「そいるニュータウン」にいるかのように錯覚した。
今日この町に、僕という異物が入り込んだ。
何が起きてもおかしくなかった。
何かが起きる。
何かが今にも起きようとしている…!!
何も起きはしなかった。
しかし本当に不思議なところだった。
僕は携帯で、4枚の写真の撮影に成功した。
この4枚で伝わるだろうか。
僕は何をするでもなく、 2・3時間、この町を歩きまわった。
始めは怪しんでいたが、いやはやいい町だ。
恐ろしく静かだし、空気や町自体も綺麗。
ほとんどの一軒家に庭のようなものがあり、
皆、ハンモックやらおっきなイスやら置いている。
お店は3つほどだが、スーパーが1つあるので、そこで事足りてしまうだろう。
気付くと僕は、いずれここに住みたいと思うようになってしまっていた。
充分、探索したのちに、僕は「コモアしおつ」を抜け出すべく、
再びエレベーターに乗った。
その瞬間だった。
カメラが直った。
町を歩いているとき、 どれだけいじっても治らなかったカメラが、
何の問題もなかったかのように、その画面にエレベーター内を映し出した。
これには、さすがにゾッとした。
エレベーターで降りていく僕を、
上から町の住人たちが嘲笑っているかのように思えた。
僕は復活したカメラでとにかく収めた。
収めた。
収めた。
そしてエレベーターを降りると、
先程の軍手がまだその場所にあった。
僕は息をのんだ。
手の形が変わっていた。
これは、どういう意味なのだろうか。
「またおいで」、なのか。
はたまた、
「早く出てけ」、なのか。
近くには、まだまだ知らないところがきっとたくさんある。
こんな近くにでさえあるのだから、
日本には、さらに多くの変な場所、魅力的な場所があるのだろう。
そして、世界にはさらにもっと…
地球、恐るべし。

















