一般家庭の引っ越しのバイトと聞いていたが、
いざ蓋を開けてみたら、現場名に「●●刑務所」と書かれていた。
騙されたが、不安と共に少しワクワクする自分もいたため、
敢えて乗っかってみた。
当日、朝から刑務所に向かう。
実際行ってみると、現場は刑務所を囲んだ高い壁の中ではなく、
そのすぐ手前に群がる、刑務所で働く刑務官たちの宿舎であり、少しガッカリした。
庭では子供たちが普通に遊び、
その周りを制服を着た刑務官たちが敬礼を交わしながら歩く、少し変わった空間。
ここで家族で暮らしている人も多いようだった。
高い壁のすぐ横で暮らす生活。
ともあれ、今日は普通の引っ越しバイトの日になるなと思っていたが、
この日僕は、人生で5本の指に入るくらいつらい経験をした。
見るに耐えない無惨な光景。
限界を超えたその先にある世界。
終わりの見えない果てしない旅路。
ひとことで言うと、
すごく大変だった。
1階から3階を何往復したのだろうか。
200…300…体感的には、500往復くらいしたんじゃないかというぐらいの
段ボールという名のゴミの山。
途中から、手と足の感覚がなくなっていた。
何も考えることは出来ず、今にも階段を転がり落ちそうなところを、
手先でわずかに感じる段ボールの重さによって意識を保ち、
本当にギリギリのところで自分で自分を支える、そんな時間が延々と続いた。
働いている最中は、「これは人生で一番つらいかもしれない」と、
わずかに保たれた意識の中で思っていたが、
一日経った今、そのつらかった気持ちは、早くも忘れ去られようとしている。
結局、「疲れ」なんてそんなものだ。
「疲れ」だけじゃない。
「美味しい」だって「気持ちいい」だって、
「嬉しい」だって「楽しい」だって、
人はどんな感情だって、すぐに忘れてしまう。
だから、なるべくそのときの気持ちをリアルタイムで残しておきたい。
しかし、最終的に埼玉の方までとばされ、
3時間かけて終電ギリギリで雨の中帰ってきた昨日、
僕にそんな力は、残っていなかった。
都内の解散だと聞いていたはずが、
結果、駅からもだいぶ離れた埼玉のよく分からないところで解散させられ、
タクシーを使わざるを得ず、
往復の交通費だけで、その日の給料の4分の1くらいが飛んだ。
そんな4月1日。